35歳以上の転職が厳しいものになる理由は、大きく3つあります。
1つ目は、供給過多という需給環境の問題です。
ほとんどの組織がピラミッド型で、上にいくほど年齢が上がる構造になっているため、35歳を過ぎると課長や部長、エグゼクティブなど、募集ポストが少ない求人を奪い合う状況によるものです。
2つ目に、心理的制約というものがあります。
通常、仕事を続け、年齢を重ねるほど、経験やスキルといった「財産」が積み上がっていきます。すると「この財産を生かさないともったいない」という心理的な制約が発生し、同業種・同職種のみを検討するといったことが起きます。
この方針は根本的には間違っていませんが、これまで培ってきた経験・スキルが思いもよらない業種(職種)で生かされる、といったことは往々にしてあります。しかし、心理的な制約が強いと、他を見向きもしない。結果、選択肢を大幅に狭めてしまうのです。
3つ目は、プライベートを含む状況からもたらされる希望条件制約です。
30代中盤以降になると結婚している人も多く、子供の学費や住宅ローンなど、年収や環境面にどうしても譲れない条件が加わることになり、これも選択肢を狭める原因となってしまいます。
収入面など、家族を養っていく立場として当然考慮すべきですが、長期的な視野を持たず、間近(転職後すぐ)の収入だけを追いかけて会社を選ぶ、といった傾向が出やすくなるのです。
これら3つの要件が重なり、転職先に求める条件が異常に厳しいものに...
- 業界・職種 ⇒ 自分がこれまで携わってきた業界・職種
- 労働条件 ⇒ 家族との時間を確保できる(残業が少ない、完全週休2日・土日祝休みなど)
- 就業場所 ⇒ 持ち家(ローン)もあり現住所から通える範囲
- 年収 ⇒ 現状維持、できればプラスアルファ
- 役職 ⇒ 現状維持、できればプラスアルファ
只でさえ厳しい「供給過多」の状況にも関わらず、これだけの条件が付与されれば困難極まりありません。更には、「人間関係」「経営の健全性」「将来への安定性」など、個別に条件が付与されるのが一般的です。
これだけの条件を満たす会社を探すとなると、自身が勤めてきた会社より規模・安定性・成長性などが優れた同業ライバル社で、これまでのポスト・年収を維持でき、かつ転居する必要がない求人、ということになります。
この条件に見合う求人があれば即決となりますが、そう都合良く見つかることは極めて稀です。また、相手方の企業にも10年以上頑張ってもポストを得られていない人が大勢いるため、ライバル企業から採用できるのは、結果的に業界を揺るがすような実績のある人に限定されてしまうのです。
供給過多 + 心理的制約 + 希望条件制約
だから厳しいというのが35歳の転職なんですが、だったらどう行動すべきか、というのが本題です。
条件を軟化させて視野を広げることが転職実現への近道
初期に設定した希望条件でなかなか転職先が決まらない場合、複合的な条件を一つ一つ分解し、条件ごとの優先順位を数値化できるくらいに整理することをオススメします。
その際は、優先順位が低い条件から許容できる範囲を設定し、必ず期限を決めて徐々に条件を軟化させていくという運用で臨む必要があります。
この運用を取り入れないと、いつまで経っても転職は実現できません。ある日突然、「自身の希望条件を全て満たした企業が表れる」なんて奇跡は起きません。それ故に、「自身が設定した希望条件では転職を実現できなかった ⇒ 条件を軟化させない限り同様の状態が続く」と考える必要があるのです。
たとえば、就業地域に対する条件を譲歩するだけでも選択肢は大幅に広がります。何故なら、大都市圏以外の中堅中小企業では、後継者不足や次世代幹部候補が不足し、順調な事業を廃業するしかないというケースもあるくらいだからです。
地域や企業規模、業種、職種によっては、35歳以上が必要とされる求人は多数あります。自分が必要とされる場所を見つけるために、求め過ぎず、こだわり過ぎず、広い視野を持って転職に臨んで欲しいと思います。