労働市場の状況を知ることができる指標として、「有効求人倍率」というものがあります。
有効求人倍率が「1」を上回れば「売り手市場」と呼ばれ求職者が有利、下回れば「買い手市場」で企業が選り好みできる...なんてことが言われ、昨今ではニュースなんかでもよく取り上げられます。
この有効求人倍率、転職市場とどれだけ関連のある数値なのでしょうか。有効求人倍率が高ければ本当に転職に有利なんでしょうか。ここに焦点を絞って見ていきたいと思います。
【有効求人倍率とは?】
有効求人倍率とは公共職業安定所(ハローワーク)の「求人数」を「応募者の数」で割って算出された数値です。求人・求職の申し込みは有効期限(通常2カ月)が設定されており、その間での申し込みに対する数値となります。この数値が1より大きいか小さいかで、労働市場の状態を知ることができる指標です。平成23年:0.65
平成24年:0.80
平成25年:0.93
平成26年:1.09
平成27年:1.20
平成28年:1.35
平成29年:1.50
平成30年:1.61
令和元年:1.60リーマンショック後は0.5を下回っている時期もあり、次第に回復傾向に推移し、現在は高水準となっている。
この通り「有効求人倍率」とは、ハローワークを通じて算出された数値(ハローワークを利用していない企業・求職者、働きながら転職活動している求職者は対象外)となります。
つまり、転職市場そのものを表した数値ではないため、単純にこの数値で「転職できる・できない」を判断するのは安易です。むしろ、中途採用においては働きながら活動している人が大半のため、転職市場に当てはめると数値は悪化すると考えておくのがベターです。
但し、労働市場全体の数値は、転職市場にも比例しているので、有効求人倍率が高いことは転職者にとってマイナスではありません。それだけ人材を欲している企業が多いということです。
転職者にとって重要なのは正社員有効求人倍率!?
有効求人倍率には、パート・アルバイト等の「非正規雇用」の数値も含まれているのですが、転職を考える人は基本的に「正規雇用(正社員)」を検討していることかと思います。
そのため、転職者はむしろ「正社員有効求人倍率」を注視しなければなりません。実はこの数値は「1.0」前後を推移しており、全体の有効求人倍率ほど楽観視できる状況ではありません。
求人が多く働き口は膨大にあれど、正規雇用は限られている!
今の労働市場を一言で表すとこれが現実ではないでしょうか。つまり、「有効求人倍率が高いから、転職は容易だろう!」は甘い考えなんですね。
また、職種によっても倍率は大きく違います。例えば、介護等を含むサービス職の倍率が2.58に対し、事務的職業は0.45(令和元年データ)となっています。
以上を考慮すると、正社員を望む転職者が注目すべき数値は、有効求人倍率よりも「正社員有効求人倍率」や「職業別有効求人倍率」となります。
これらの数値が全てではないですが、ある程度の転職難易度を測る指標にはなります。その難易度に応じた準備や対策が転職成功への一つの鍵となるでしょう。
厚生労働省が公表している「職業別一般職業紹介状況(常用・除パート)」に職業別の倍率が分かりやすく掲載されています。あなたの望む職業の状況把握に活用して下さい。