転職活動において「自己アピール」の重要度は極めて高いものになります。それにも関わらず、適切な自己アピールができていない人が多いのが実情です。適切な自己アピールとは、「企業目線に沿った自己アピール」のことを言います。この企業目線って何かというと、「利益を出せる人材かどうか」という点です。
結局、採用活動とは、応募者の中でNo.1を抽出する作業です。企業は、10人の候補者がいれば「採用することで自社に最も多くの利益を出してくれる人」を採用するわけです。これが企業目線であるので、自己都合のアピール(例:御社ではこんな仕事をして成長していきたいです)では内定を勝ち取れません。
これは、経験者、未経験者であっても同じです。
未経験職への転職だからアピールすることがない・・・。これは未経験職を目指す転職者が頭を悩ます部分ですが、結果、「入社したら全力で頑張ります」や「憧れていたその仕事に就きたいんだ」といった情熱などをアピールします。もちろん、これも大切な要素ですが、やっぱり自己都合であるために、内定を勝ち取るのは至難の業です。
ここは、経験有・未経験を問わず、「自分を採用すれば利益となりますよ」をアピールしなければなりません。これが企業目線に沿った自己アピールであり、採用過程(書類選考・面接)で伝えるべき重要ポイントです。ここを理解すれば、企業に対する売り込み方が大きく変わります。
経験者は自分の経験を転職先に活かすストーリー作りを!
経験者の場合は、採用側に「この人を採用することで収益につながりそうだ」と明確にイメージを持てるような話ができればベストです。これができれば、面接の突破率が大幅に上昇します。
そこで重要なのが、「自分の経験に基づいたストーリー作り」になります。事実、「自分のこれまでの経験やバックグラウンドと会社の利益を関連付けて話ができる人」というのは本当に強いです。
医薬品メーカーに転職希望で、MR(医薬応報担当者)志望のAさんは、面接で次のように言いました。
「私、実は親が医者なんです。子供の頃から医者としての父を見ていましたので、医者が何を喜び、何を嫌うかを知っています。たとえば、お医者さんが新薬を試してみたくなるタイミングって、具体的には〇〇の時ですよね。だから、そのタイミングを見計らって新薬の営業をかければ・・・」
採用担当者がAさんのこんな話を聞いたとすれば、「顧客である医者の気持ちや都合を理解しているので、顧客から信頼されるだろうし、優秀な営業実績を上げてくれそうだ」と考えるはずです。Aさんの場合は、親が医者という恵まれたバックグラウンドを持っていますから、それを活用したわけです。
もしも、Aさんが次のようなことを話したとしたらどうでしょう?
「私、実は親が医者で、尊敬していた父と近い業種に就きたいと考えておりました。今回、御社がMRを募集していることを知り、是非ともこの想いを実現したく・・・」
採用担当者は「あなたの想いは分かったけど、自社の利益(売上)には全く関係のない話ですよね」と判断するはずです。つまり、採用するメリットがないので不採用となるわけです。
この例が示すことは、自分のウリに気付く能力と、説明する能力の問題です。
経験者に関しては、応募先の会社と現職で繋がりのあるものを探してアピールする必要があります。「現職での経験・実績」だけでなく、「応募先での活躍に必要な能力・収益を上げる見込み」も絡めてアピールすることが重要です。
異業種・未経験でも共通点を見つけてアピールする!
異業種や未経験職への転職者の場合も、応募先で活かせる共通点を見つけ、効果的に売り込むことが重要です。間違っても、やる気や情熱のアピールに逃げるのは避けて下さい。この種の「自分目線の自己アピール」では経験者に勝てません。
家電量販店で4年勤務し、売り場で家電を販売していた26歳のBさんのケース。「もっと稼げる営業マンになりたい」「外回りもしたい」という想いを持ち、証券会社への転職を考えました。このBさんのパターンは、「量販店で低価格の有形物を売る販売職」から「富裕層に対して高単価の無形物を売る個人営業」を目指す数段飛ばしのキャリアアップを狙う転職です。
異業種へのキャリアアップを狙う転職ですから、「フロアでは売上No.1でした!販売には自信があります」という実績だけのアピールではちょっと弱い。
採用担当者としては、商品が変わった時に、Bさんの能力は活かせないだろうと考えます。「家電なんて高くて10万円そこらでしょ。証券会社に入って1000万円の株は売るのはしんどいよね。売り方も全く異なるわけだし・・・」となるわけです。
では、どんなアピールが必要なんでしょうか?
「私の得意なお客様は富裕層でした。15万円以上お買い上げ頂いた方には連絡先をお聞きし、お礼のメールや手紙をお送りしていました。そのお客様からのご紹介による、新規のお客様の購入が年間30件、売上にして約3000万円あります。富裕層への接客とリレーション作りでは誰にも負けません。この経験を活かせる富裕層相手に提案できる仕事がないものかと探していたところ、この営業スタイルが求められる証券マンという職種を見つけ、業界未経験者にも活躍者が多い御社を志望しました。微力ではありますが、富裕層のお客様リストも120件保有しています。御社に入社できましたら、こちらのお客様全員に挨拶周りするところから営業活動を始めたいと思っています。」
このアピールなら数段飛ばしのキャリアアップを狙うことも不可能ではなさそうです。採用担当者に、「なるほど、ただ家電を売っていただけじゃなく、富裕層のお客様とお付き合いするために工夫していたんだな。顧客リストがあるのなら、入社直後の苦しい新規開拓営業も乗り切れそうだ」とイメージしてもらえるでしょう。
この例が示す取り、共通要素がない仕事(異業種・未経験)に何の準備もないまま転職しようしても、前職の経験やそこで培った能力を活かせないので、転職を成功に導くのは難しいです。
ただ、大抵の仕事には、どこかに共通点があります。どんな仕事でも、頑張っていたのなら何かしらの「強み」を身に付けているはずです。この共通点を見つけて効果的に売り込むことが転職活動における「センス」であり、異業種・未経験職種への転職を実現させるカギになります。
未経験だからアピールすることがない。
未経験だからアピール材料が見つからない。
だから、新卒採用のように頑張りや熱意をアピールする・・・。
これでは内定は勝ち取れません。
異業種、未経験だからこそ、より深い企業研究を行い、応募先でも活かせる共通スキルや経験を抽出してアピールしなければなりません。この作業が必要だからこそ、異業種・未経験への転職が難しいとされているのであって、逆説的に捉えれば、これが出来れば可能性は十分にあるということを意味します。
未経験職を目指す人は意地でも「共通点」を見つけ出して下さい。
そして、自信を持ってその点をアピールして下さい。
そうすれば、未経験職へ転職する道が開けるはずです!