外資系企業への転職を考えている!
これは何も悪いことではないですし、候補の一つとして十分に検討する余地があります。ただ、外資系を志す明確な理由を持たず、単なる憧れや、外資系という響きだけで志望している場合は要注意です。何故なら、「外資系企業の実態」や「日系企業との違い」を知らずに転職し、後悔に終わる人が後を絶たないからです。
ここでは、外資系企業への転職を志す人に知っておいて欲しい事実をお伝えします。外資系への転職を成功に導くためにも、「外資系企業とは何ぞや?」という部分をしっかりと把握して活動に臨んで下さい。
外資系企業、日系企業という分類でお伝えしていきますが、本来はこうした一括りは適切ではありません。たとえば、外資系といっても様々で、日本でも長い歴史を持ち、一般的な日系企業以上に日本的な経営を行っている企業も存在するからです。また、米系、ヨーロッパ系など、系統によっても違いがあります。なので、ここでのお話しはあくまでも一般論という観点で捉えて下さい。
1.情報量が限られる為にリスクの把握が難しい
外資系企業とはいっても各社間には様々な違いがあり、リスクの内容も個別に変わってきます。その為、「外資系だったらこんな仕事の進め方をするはずだ」と思い込み、それに合わせたリスクだけを想定することは非常に危険なんですね。
ただ、外資系企業の場合は、日系企業(特に大手有名企業)と比較すると外部への情報量が少なく、直接社員に合える機会も少ないのが実情です。なので、転職活動に対して「どうせ情報もないのだから調べても無駄。外資系だったらこんなもんだろう」と決め込んで臨んでしまいます。
その結果、リスクを深く調べもしないまま「運を天に任せた転職」をしてしまうことになり、ギャンブル的要素が強くなってしまうことに。そして、転職後に想定外が発生し「こんなはずじゃなかった・・・」と後悔するんです。
ここは、情報が限られているからこそ、可能な限りその会社の情報を知る努力が必要なんですね。
人材紹介会社の持つ情報を利用する、採用面接の際にとことん質問する、株主向けのIR情報を徹底的に分析する、方法はいくらでもあります。面接の際に、会社の実態を知るための質問をすることは、前向きでマナーに沿った方法であるなら、熱心に志望しているという好印象を与えることにもなります。遠慮せずに徹底的に行うことが成功への鍵となります。
2.転職が当たり前の外資系企業はスタイルが独特
外資系企業の中には、転職が当たり前(人が流動的)な職場もあります。ここにどんなリスクが存在するのかというと、転職者はセルフサービスという考え方に順応しなければいけないということです。
一定数の転職者が採用されているということは、一定数の退職者も存在するということです。このように、一定の雇用の流動性が存在する場合、会社としてはなるべく効率的に社員に接していく必要があります。その為、転職者がセルフサービスすることを前提として会社の施策を整備する傾向にあります。
たとえば、ITシステムや申請書類、ヘルプデスクなど、転職者がその会社で円滑に業務するためのインフラはきちんと整えます。しかし、それについて手取り足取り細かく教えることはありません。あくまでも転職者自身がセルフサービスを前提に、「自分で質問する」「自分で申請する」という行動をとってはじめて成立する仕組みとなっています。
このようなセルフサービスの仕組みを理解していれば問題ありませんが、慣れていない人の場合、「誰かが手続きの仕方を教えてくれるまで待つ」という姿勢を続けてしまい、指定の期日までに手続きが終わらないといった事態が発生してしまうのです。日系企業のように「〇〇をいつまでに提出して下さいね」といったスタンスは存在しません。
また、このセルフサービスという考え方は仕事の進め方にも表れます。職場自体が転職者に慣れているので、どの転職者に対しても、「細かく指示しなくても分からないことは自発的に聞いてくるはずだ」「早期に成果を出してくれるはずだ」という前提でいるわけです。
この感覚は、日本の大企業に代表される「重厚な根回し文化」に慣れた人からするとかなり違和感があるかもしれません。日系企業と比較すると、会社が準備すべきプロセスが省かれ、本人の責任として押し付けられてるという解釈になります。
現に、このセルフサービスというスタイルに順応できず、退職する人がたくさんいることを知っておいて下さい。あなたも同じ道を辿らぬよう、外資系企業を志す場合は「各会社が持つスタイル」についても情報を得ておく必要があります。
3.成果と雇用が直結する厳しさがある
これはあくまでも一般論で、外資系企業だけに限ったことではありませんが、転職が当たり前の職場の場合、新卒採用が中心の会社と比べて、成果と雇用が直結する厳しさはより強いものとなる傾向があります。
分かり易く言うと、「ある程度の時間と余裕を持ち、成果が出るまでじっくり待ってくれる」という文化ではなく、「採用後すぐに成果を評価し、評価が低ければ、雇用の問題と関連付けて考えられる」ということです。この違いも文化に馴染めないリスクにつながります。
- 採用後は一から丁寧に仕事を教えてもらえる
- 採用後一定期間は成果を出さなくても許される
- 成果を出さなくても雇用し続けてもらえる
こういった日系企業的感覚、新卒採用的感覚を持っていると足をすくわれます。
こんな側面があるので、「長い目で成果を評価する文化の会社」から「成果と雇用が直結する文化の会社」に転職した場合、転職先の文化が非常にドライなものに感じてしまうかもしれません。外資系企業を志望する場合は、この傾向が強いことを想定しておく必要があります。
4.職務に対する考え方が異なる
外資系企業では、人事制度の中心に職務という考え方があり、個々の社員が担当する職務は明確に定義されています。これは、個々の社員の責任範囲が明確化されていることを意味します。すなわち、不必要な根回しは行わずともすみますが、その代わり自分が判断したことの責任は明確になります。
一方、日系企業では、職務という概念が不明確であるために「責任の所在」がはっきりせず、仕事を進めるのに多くの根回しが必要となります。この因果があるので、何らかの成功を収めても全てが自分の成果とはなりません。そうなると、大きな成功を収めるよりも、失敗を犯して責任を取ることのリスクを回避する方向に動きます。
こうした背景から、部下に意思決定を求められても、失敗しないように100%の情報を求めます。確実に情報を集め、根回しも周到に行います。その結果、「意思決定には慎重にゆっくりと時間をかける」という日本的なスタイルが出来上がるのです。
前述した通り、外資系企業の場合は「職務」が明確で「責任」もはっきりしています。その為、「失敗しない代わりに、成功もなく、成果もない」といった日本的なスタイルは失敗と見なされるのです。
この環境下で成功を収めるためには「迅速な意思決定」が必要不可欠で、60%も情報が集まればその時点で意思決定しなければなりません。根回しも必要最低限しか行わないので、意思決定に関する時間はますます少なくなります。
日系企業から外資系企業へ転職する際の最大のリスクはここにあります。
つまり、仕事のスタイルを「多くの人に根回してゆっくり意思決定する」から「根回しは最低限に迅速に意思決定する」に変更しなければならないのです。もちろん、上手く順応してスタイルを変更できる人もいますが、「順応できずに苦しむ人がいる」というのも事実です。
これが実態なので、日系企業の経験年数が長く、はじめて外資系企業に転職する人の場合、採用過程で「スタイル変更に柔軟に対応できる人物かどうか」が見極められます。なので、自分は新しいスタイルに柔軟に対応できそうか、自分はこのスタイルを望んでいるのか、転職に踏み切る前に検討することが大切です。