欧米と違って、日本の社会では「新卒で採用された会社にずっといる人の割合が高い」と信じられてきました。一昔前まではこのような傾向があったのは間違いないでしょうが、今も一部の限られた人だけが転職しているのでしょうか。
転職を考えている人にとって、「どれくらいの人が転職を経験しているのか?」というのは気になるところですよね。ここでは、最新のデータとを用いて「転職する人の割合い(転職率)」と「転職前後の賃金変動率」について考察しています。
転職を考えている自分自身の位置付けを確認してみましょう。
転職は驚くほど一般化している!
先に結論をお話しさせていただくと、社会人として働き始めてから現在までに「転職をしたことがある」という人は、52.5%にもなります。つまり、社会人の5割以上の人が転職を経験しているというのが今の社会の実態なんですね。
年齢 | 転職経験有 | 転職検討有 | 転職検討無 |
---|---|---|---|
25~29歳 | 35.3% | 33.1% | 31.6% |
30~34歳 | 59.9% | 19.1% | 21.0% |
35~39歳 | 53.5% | 20.2% | 26.3% |
全体 | 52.5% | 22.0% | 25.5% |
このように、転職は驚くほど一般化しており、転職を意識したことがない人は少数派になります。今や転職は、一部の市場価値が高い人のためだけのものではありません。特に20代・30代の若い人であれば、誰もが転職するか、今の会社に残るか、といった局面に遭遇しているわけです。
リクルートが実施した転職市場定点観測調査でも、「29~33歳までにエンジニア以外の全ての職種で生え抜き比率は5割を割っている。つまり、30代前半において、転職未経験者はマイナーな存在になっている」と報告されています。
- 転職を考え、実際に転職した 50%
- 転職を考え、現職に留まった 25%
- 転職を考えたことがない 25%
これが今の社会の実態であり、転職を考えているあなたは多数派です。もちろん、転職している人が多いからといって、転職することが正解だとは限りません。ただ、転職を「不満の改善」「キャリア転換」「キャリアアップ」のきっかけとして捉え、行動に移す人が多い世の中となっています。
転職と賃金変動の関係
転職すると賃金は上がるのでしょうか。転職すること自体がキャリアの飛躍につながるのなら、賃金が上がる確率は高いはずです。(前職と転職後の賃金の変動状況 - 厚生労働省:雇用動向調査より)
年齢 | 増加 | 維持 | 減少 |
---|---|---|---|
20~24歳 | 33.7% | 34.3% | 31.3% |
25~29歳 | 31.8% | 35.3% | 31.2% |
30~34歳 | 29.5% | 36.3% | 33.3% |
35~39歳 | 27.7% | 38.0% | 33.7% |
40~44歳 | 24.2% | 39.3% | 35.1% |
45~49歳 | 25.1% | 40.8% | 33.6% |
50~54歳 | 16.8% | 46.2% | 36.1% |
55~59歳 | 16.6% | 48.4% | 33.9% |
転職は「賃金アップ」や「キャリアアップ」だけが目的ではないですし、個々人の経験・スキルも異なるので、どの年代でも賃金が上がる人もいれば、下がる人もいます。ただ、このデータから一つの事実が読み解けます。
年齢が高くなるほどに賃金アップは難しくなる!
20代では、賃金が増加する比率が、減少する比率を上回っています。しかし、30代になると減少する比率の方が高くなってしまいます。更に、40代、50代と年代が高くなるにつれ、現状維持・減少が圧倒的な割合を占めます。
元来、40代以上の年齢層では、転職を取り巻く状況は厳しく、賃金は上がりにくいことは知られていることだと思います。ただ、30代の転職ですら、賃金が下がる比率の方が高いのです。20代ではさすがに上がる比率の方が高いのですが、それでも3割強に過ぎない、というのが実情です。
このことから、転職すること自体がすぐに賃金上のメリットとイコールではないということがわかります。20代、30代のような若い人の転職でさえ、賃金が上がるかどうかは、転職後の頑張りにかかってくるのです。
何故、若い人ほど賃金が増加する割合が高くなるのでしょうか?
この理由は複数存在するのですが、最も大きな要因は、年齢が低くなるほど元々の賃金も低かったからです。単純な理由ですが、転職前の賃金が低いからこそ、転職後の賃金が上がる可能性も高まるわけです。
また、企業としては、年齢層が若いほど、採用意欲も高くなります。何故なら、企業が転職者の賃金を決定する際に前職の賃金を参考にするため、年齢層が若いほど、採用後の賃金も安くできるからです。同じような市場価値を持つ候補者がいるとして、より若い人を採用するのはこのためです。